marbleMe開発の軌跡 – 6人の熱い思いが生んだコミュニティサービス

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dentsu Japan (株)電通/(株)電通デジタル

クリエイティビティと実現力、生活者インサイトとカスタマートランスフォーメーション&テクノロジーに基づく専門性を最適に組み合わせ、顧客企業の事業成長パートナーとして歩むと共に「B2B2S_Business to Business to Society」を経営方針に掲げ、顧客企業との協業を通じて社会全体に価値の創出を目指しています。
※所属は2023年12月時点のものになります。

  • 田川 絵理
  • 岩崎 文美
  • 安東 咲
  • 硲 祥子
  • 長谷川 みのり
  • 五十嵐 慶大

marbleMeの構想を形にし、marbleMeの骨格をつくり上げた、電通・電通デジタルの6名に、ユーザー目線でサービスを磨き上げていった開発秘話をお聞きしました。

より確信の持てるサービスへ

プロジェクトに参加した経緯を教えてください

  • 田川さん

    我々がプロジェクト参画への打診を頂戴したのは、2022年の2月。市場の検証、各種調査や検証を重ねて要件定義まで。既にサービスデザインにおいて踏むべきプロセスも凡そ完了し、3か月後にはPOCを控えたタイミングでしたが「構想するサービス/コミュニティを、確信の持てるものにしたい」というのが、ご相談の要旨でした。

“正しいこと”より、“使い続けたくなる”サービスを

プロジェクトを初めて聞いたときの感想を教えてください

  • 田川さん

    サービスの構想は、高尚でユニークで、多岐にわたる機能がロジカルに構想されていると率直に感じました。が、一方で実際に働く女性であり、今後更年期障害などセンシティブな健康課題に直面していくやも知れぬ当事者である自分自身が「正しい」ことはわかるけれども、見知らぬ人に、抱える悩みや課題を吐露する抵抗感を超えて使い続けたくなるサービスかどうか、確信をもつに至れなかったことも正直なところでした。なので、正しいことよりもユーザーとして本当に使いたくなる「サービスの骨格」をつくること。誰がどんなときに使いたくなり、得られる“ベネフィット”は何か。ニーズに応える“機能”だけではなく、惑いや悩みが伴う個人の気持ちに寄り添った顧客体験全体の設計をご支援させていただくことが我々の使命だと捉え、プロジェクトに挑ませて頂きました。

  • 岩崎さん

    私もこのサービスが「PMSや更年期に悩む女性が抱えている共通課題が「悩みを人に言えず、周囲に理解されないこと」であり、だからこそ「同じ悩みを抱えた、同じ境遇の人同士が安心して語り合える場をつくること」がソリューションにつながるという点に着眼された意義はよく理解できました。しかし、PMSや更年期女性の悩みや抱える症状は、実際にはそれぞれに異なり、共通の解決場所ができるというだけで、これまで言えなかった悩みを簡単に言い出せるか?という部分には疑問を感じました。異なる悩みをもった一人ひとりの女性が「私向けのサービスだ」と思ってもらうためにも、一人ひとりにとってのベネフィットが大切になってくると考えました。それは、その新しいサービスを「使いたい!」と思ってもらうための、新しい動機(モチベーション)そのものだからです。通常のコミュニティは「好きなものがあってそこに集いたい」という強い意欲を前提に作られていますが、このサービスにはそれを新しく生み出さなければなりません。そのためにも、このサービスにしか約束できない価値とは何かを、ユーザー視点・ビジネス視点の両面から考え、ディスカッションを重ねさせていただきました。その価値を体現するサービス体験の具体にまで落とし込むプロセスを経て、私自身もこのサービスの持つ意義と魅力の解像度が上がったと感じています。

  • 安東さん

    生理やPMSについては社会の理解が進んでいると感じていますが、更年期についてはまだまだだと思っています。自分の将来のことを考えると早く取り組まなきゃいけない課題だとプロジェクト参画当初に思い至りました。
    その上で、日本人の国民性なども考えると「共感して言い合える」環境を用意するのは凄く意義があることだと感じました。言語化出来ていない個々の課題を世の中の課題にするためにコミュニティというものは可能性があると思っています。

  • 五十嵐さん

    男性視点での意見としては、企業におけるマネジメントの役割を補完するような可能性もありそうだと感じました。例えば、ハラスメントに対する意識が高まっている昨今において、男性のマネージャーが女性の部下を持つ際に、その部下の悩みにどこまで踏み込んでケアすべきか迷うシーンもあるかと思います。
    そういうときにmarbleMeのような自走するコミュニティサービスが、マネージャーの働きを補完して働く女性を支えてくれるようになったら、とても素晴らしいサービスになるのではないかと感じていました。

サービスとしての「ありたき姿」から理想体験をつくる

取り組んだ領域・内容について教えてください。

  • 田川さん

    プロジェクトで議論すべき要素について、まずメンバーのみなさんと共通認識を持ちたいと考え「0次仮説」として提示したことが、我々のファーストアクションでした。簡易インタビュー等を通して、今はまだ世にないサービスの利用が目される女性の健康課題の他、キャリアやライフプランを考えるにあたって生じる惑いや悩みまで。潜在的かつ根源的な観点でフォーカスすべきインサイトと、他でもなく御社が取り組む必然性も含めてその提供価値とコンセプトを仮説として明文化することで、みなさんとの議論のたたきとしたわけです。また「0→1」のサービスデザインプロジェクトを高速推進するにはコンパクトなチーミングが最適と考え、コンセプトとプロトタイプを行き来しながら、スピーディーに推進できるプロジェクトデザインとチーミングを行いました。

  • 岩崎さん

    プロジェクトは2つのフェーズに分かれていて、フェーズ1は、このサービスの骨格と呼んでいる「提供価値やユーザー体験の理想像」、つまりユーザーにとってこのサービスとは簡潔にどんなサービスなのか、の顔つきを明確にしていくプロセスです。理想的なユーザーを定め、ペルソナを描き、心理的物理的ペインや潜在的な欲求を見出すカスタマージャーニーを土台として、サービス全体のコンセプト作りや、そのコンセプトを具現化させるコア体験設計(機能や仕組みをストーリー化したもの)などを中心に関与してきました。個人的に力を注いだのは、サービス利用者である女性たちが具体的にどのような場面でこのサービスを利用したいと感じるのか、という点です。実際にターゲットとなりうるPMSや更年期で悩むユーザーの声をもとにして、よりリアルな顧客視点を取り入れることを心掛けました。

フェーズ2ではどのようなことを対応されましたか

  • 岩崎さん

    フェーズ2は、このサービスのコア体験と呼んでいる「コミュニティ・その他機能群を含む体験の流れ」において、4回のPoCを経てスタートしたサービスが、「構想段階で定義していた価値や魅力がユーザーに受け取ってもらえているか」と「伝わりづらい点やまだ足りていない体験やボトルネックはあるか」の課題を洗い出すプロセスでした。ヒューリスティック分析で、現状サービスを俯瞰し「つまづきポイント」を探すところから始め、marbleMeの「コミュニティ体験フローのあるべき姿」を導出することに注力しました。最も難しかったのは、いつどのタイミングで参加したとしても、スムーズにそのユーザーの「悩みの状態を可視化」したり「コミュニティの参加促進」につながり、意識せずとも導かれているフローにする、という点でした。現在は、リリース直後で基本機能は備わっている一方、ユーザーに次に踏み出してもらう後押しや提案、スムーズな誘導はできておらず、課題が多くある状況でしたので。加えて、「継続的にmarbleMeを使い続けてもらうために何が必要か?」「一人ひとりの状態に合った解決を見出す気づきを得てもらうためには?」など、これまで以上に、marbleMeへの愛着や関与をもっと深めてもらうという視点からより具体的なご提案をさせて頂きました。

徹底的なユーザー視点にこだわったサービスの磨き込み

力を入れた点やこだわった点を教えて下さい

  • 岩崎さん

    サービスコンセプトの構想段階から大事にしていた点として、不特定多数の「みんなのためのサービス」ではなく、「一人の人間として関わりたい/関わりたくなるサービスかどうか」という「n=1」を重要視しました。「私の悩みを解決してくれるサービス」が結果として「みんなの悩みを解決するサービスにもなっている」ということが、marbleMeを使いたいと思う「新しい動機」を生み出すと考えていたからです。また「課題解決型のコミュニティ」というものが、一般的なコミュニティサービスの概念とは異なり、ユーザーも具体的に、何が体験できるのかのイメージが沸かないことが良くも悪くもあります。marbleMeらしい世界=場に必要な、空気感や心地よさ、やっていいこととやってはいけないことなど、細部に至るふるまいを「機能でどう補い、ユーザーに気づきを与えるか」を深くメンバーと議論しました。最終的に、このコミュニティに関わった人がどんなプロセスで、「自分なりの課題が解決できる状態」に導くのか、に拘って将来の体験を構想(妄想)できた点がよかったと思います。

  • 安東さん

    我々が広告業界で培った顧客の洞察は、marbleMeのような新規性の高いサービス開発には欠かせない要素だと考えています。生活者が表出化しきれない本音の思いや欲求を「インサイト」と呼んでいます。marbleMeというプラットフォームの価値を定義するために、女性たちの日常における疲れやストレス、漠然とした違和感の裏に隠された「インサイト」を掘り下げることに注力しました。
    また、プロジェクトに関わるにあたり意識したことは「自分が生活者として嘘をつかない」ということでした。何度も何度も「このサービスを私は使うのか」という所に立ち返りメンバーで話し合って「あるべき姿」を設計しました。

  • 長谷川さん

    設計を進めていく中で、ユーザーそれぞれが「いかに自然体でmarbleMeに関われるか」ということが重要だと感じました。ユーザー視点のスペシャリストが集まったこのメンバーで、それぞれの「ユーザー視点」を持ち寄り日々ディスカッション出来たのが良かったと考えています。

  • 硲さん

    ユーザー視点の話につながりますが、「①はたらく女性の置かれた状況の改善に役に立つサービス内容であること」、「②はたらく女性たちがリアルに使い続けられるものであること」のふたつを両立させることも非常に強く意識したポイントです。最初はかなりリフレクション(内省)を実践的に行うサービスを想定していましたが、ユーザーインタビューでの検証を経て、より彼女たちが居続けやすいコミュニティになるべく、ストイックさを減らすなど調整を行いました。なかなか周りに相談できず、問題を抱えたまま一人で悩んでしまう人が多いからこそ、居心地がよくて、自分の成長にもつながる、ひいては課題解決のヒントにもなるようなコミュニティデザインのバランスが大事になると考えました。

似たような悩み、違う解釈。共感が広がる

marbleMeならではの体験

  • 長谷川さん

    女性だけの空間だからこそ、似たような悩みでも人それぞれ違う解釈があることに気づかされます。自分と同じことを感じている人が他にもいるのだと知ることで、共感が広がっていく場になればいいなと思いますし、こんな風に感じる人もいるのだと、新しい価値観に出会える場にもなれば良いなと。

  • 安東さん

    私も同感です。話す人だけでなく聞く人にとっても価値がある。marbleMeがそういった機会を提供できれば素敵だと思います。

社会全体で取り組む、働く女性(ひと)の健康

marbleMeが目指していくべきもの

  • 硲さん

    働く女性の課題は、女性だけの問題ではなく、男性、その他性別の方にも地続きの課題。まずは課題が表出している働く女性の課題に対し、新しいアプローチをしているのが本サービスだと思っていますが、最終的には、個人個人がそれぞれ働きやすく暮らしやすい毎日のために、少しでもサポートになればという気持ちで関わっていました。

  • 田川さん

    働く女性の健康課題は、個人の域を超え、企業や社会全体の課題として捉え応援する仕組みが必要だと思います。働き方も生き方も多様化する今、marbleMeが、語らう場を通して新しい価値観にも触れ、気づきを与えるコミュニティとして機能すること。一人ひとりが、自分の人生を自分の意思で選択し、自分らしく活躍する世の中の一助となるよう。また、女性に留まらず「全員活躍」を応援する領域へも進化を遂げるご支援ができればと考えます。